コンパクトシティとは都市の中心部に住宅や商業施設、公共施設など都市機能を集約し、人々の生活水準の向上や経済の活性化を目的としています。
1990年代から欧米を中心に世界の多くの都市がコンパクトシティ政策を推進しており、
国土交通省では、コンパクトなまちづくりについて下記としており、その重要性を強調しています。
コンパクトシティを推進することで、持続可能な社会を実現しようという期待が高まっています。
今回は、コンパクトシティの概要からメリットやデメリット、実現に向けての課題について解説します。

です。
国土交通省によると、コンパクトシティには3つの特徴があるとされています。
こういった特徴を持つ都市をコンパクトシティと定義しています。
しかし、国土交通省が実施した国民意識調査によると約半数の49.3%が、コンパクトシティという言葉を「聞いたことがない」と答えています。
コンパクトシティという言葉は、未だ認知度が低いようです。
その一方で、
参照元:第1節 賢く使う|国土交通省
では、コンパクトシティにはどんなメリットがあるのでしょうか?

日本が直面する人口減少などの社会問題を解決するために、官民挙げてコンパクトシティの形成が推進されています。
ここからは、コンパクトシティのメリットについて解説します。コンパクトシティの主なメリットは、以下のとおりです。
それぞれについて具体的に見ていきましょう。
日本では地方から東京に人口が流入し、東京一極集中が進んでいます。
人々が東京に移住する理由の一つは、仕事や生活必需品を購入するスーパー、医療施設や公共施設が徒歩圏内にあり、生活が便利であることです。
一方で、地方では人口が郊外に拡散しているため、インフラが整備されていない地域に住んでいる住民は通勤や買い物、通院のために不便を強いられるケースも珍しくありません。
社会インフラの整備は、人々の生活水準の維持・向上のために不可欠です。
内閣府は、インフラの整備の重要性について次のように言及しています。
インフラは、国や地方経済の成長の基盤であり、国民生活の質を高めるものでもある。また、インフラの整備が不十分であることが、社会サービスへのアクセスを妨げ、 地域格差を拡大し、社会の安定を阻害する要因となる場合もある。インフラ整備の状況は、国内企業や外国企業の投資の決定要因ともなり、アジアが今後も成長率を高めていくために、重要な要素となっている。
地方では人口の減少と郊外への流出が進んでいますが、一つの自治体全体にまんべんなく道路や上下水道、電気、ガス、交通機関などを整備し、維持し続けることには莫大な資金が必要になります。
東京を除く大半の地方自治体では人口が流出し、経済活動が停滞し、税収が不足しています。
このため、
コンパクトシティ政策によって郊外から街の中心部へ人口が移転すれば、一部の地域に社会インフラを整備するだけでよいことになります。
より多くの住民に社会サービスが提供される一方で、地方の税負担は軽減されます。
また、コンパクトシティが進めば、単位面積当たりの税収が上昇し、地方自治体の税収も増加します。
地方では人口が郊外に拡散しているため、通勤や通学、医療施設や生活必需品の購入のためのスーパーへのアクセスのために自動車は不可欠であり、人々の自動車への依存度が高まります。
また、鉄道などの公共交通機関も都市の中心部だけではなく、地域全体にまんべんなく整備する必要があります。
しかし、結果的に自動車が排出する排出ガスや人々が消費するエネルギーも大きくなります。
さらに公共交通機関を都市の中央部へ整備すれば事足りるようになり、消費するエネルギー量も減少します。

コンパクトシティには多くのメリットがある一方で、政策を進める上でデメリットや課題もあります。
ここからは、コンパクトシティのデメリットについて解説します。コンパクトシティの主なデメリットは、以下の通りです。
それぞれについて具体的に見ていきましょう。
コンパクトシティ政策が推進されると、都市の中央部では人口密度が高くなります。
中央部では不動産の需要が高まり、価格が高騰することが危惧されます。
住んでいるだけで多額の家賃を支払う必要があり、住宅を購入するために住宅ローンの負担が大きくなるでしょう。
このように
一方で、されます。
都市部に人口が流入することで住宅も密集します。
住宅が密集している東京をイメージするとわかりやすいですが、されます。
郊外に住んでいたときには気にならなかったことがトラブルとなり、住宅環境は悪化することが危惧されています。
近隣トラブルは、裁判沙汰になる可能性もあるほど深刻な問題となっています。

ここまで解説していきたコンパクトシティですが、現実的には課題が多いのも事実です。
もっともコンパクトシティ化が活発であり、成功事例として紹介されることの多い富山市は、従来の自動車に依存した都市構造を見直し、公共交通機関を設置して手軽に利用できるような環境を整えています。
『お団子と串』の構造にたとえ、生活圏と生活圏を公共交通機関で結び、車を使わず徒歩で移動できる範囲を増やしました。
富山駅を貫いて路面電車が行き来できるようになったことで、駅を挟んだ南北が分断されにくくなり利便性が高まりました。
しかし、便利な駅周辺の住居よりも郊外の方が安く、しかも一戸建てを建てることができます。また、すでに郊外に長く住んでいる人は、生まれ育った場所を離れることは難しいでしょう。
さらにはコロナ禍によってリモートワークが進みました。あえて窮屈な中心街に住まなくても、広い郊外の家でリモートワークすることも可能です。
自然環境が豊かな郊外で子育てをしたいという人も多いことでしょう。
中心街の人口密度を高め、経済を活性化できるコンパクトシティですが、強制的に住民を移動したり、住む場所を強要したりすることはできません。
人々の暮らしの多様性が増していることもあり、郊外に住むことのメリットも大きいのです。
コンパクトシティを実現するためには多くの課題がありますが、無計画に街づくりを行う時代は終わりました。
推計によると、2040年には全国896の市区町村が「消滅可能性都市」に該当。
うち、523市区町村は人口が1万人未満となり、消滅の可能性がさらに高いとの予想もされています。
参照元:「地域消滅時代」を見据えた今後の国土交通戦略のあり方について|国土交通省

住民サービスの質の向上やインフラの維持などを目的として、都市機能を集約するコンパクトシティが注目されています。
日本では富山市や大分市などがコンパクトシティ政策を成功させており、政府も積極的に推進しています。
また国内に限らず海外でもコンパクトシティの事例が多くあります。