環境モデル都市とは?一覧や取り組み事例、エコタウンなどとの違いをわかりやすく解説

wanwei2025202025-06-20 16:42:01
  低炭素化社会実現のための取り組みである「環境モデル都市」。2008年から始まった取り組みですが、近年SDGsへの関心の高まりから再び注目を集めるようになりました。   とはいえ、「環境モデル都市」「SDGs未来都市」「環境未来都市」「エコタウン」などさまざまなワードが出てくるので、何が違うのかピンとこない人も多いと思います。   そこでこの記事では、「環境モデル都市」を中心に取り上げ、他のワードとの違いや具体的な取り組み事例などについてご紹介します。   環境モデル都市とは、低炭素社会の実現に向けて高い目標を掲げ、先駆的な取り組みにチャレンジしている都市として、政府が選定しているものです。   そもそも低炭素とは、温暖化防止のためにCO2などの温室効果ガスの排出量をできるだけ減らす取り組みを指します。   平成20年、第169回国会における福田内閣総理大臣の施政方針演説にて、「低炭素社会の実現」について言及されたことを機に環境モデル都市の募集を開始し、同年には13都市が選定されています。   その後、2011年の東日本大震災をきっかけに、低炭素まちづくりを全国に一層普及させるため追加選定を実施。が選定されました。   具体的な取り組み内容は後ほど詳しく事例を取り上げますが、例えば、などを通して、都市内で統合的に推進するものが挙げられます。   環境モデル都市に選定されるメリットとして、「予算の支援が優先かつ重点的に行われる」「国による取り組み評価・公表が受けられる」といった支援を受けられる点が挙げられます。   次にもう少し踏み込んで、環境モデル都市の目的を確認します。   低炭素社会を目指すといっても、選定が始まった当初はまだ知見が少なく、自治体としても具体的に何をすればいいのかがわかりにくい分野でした。そこで、日本政府が先進的な地方自治体の取り組みを選定することで、他の自治体に具体的な方法を示すことが可能です。結果として、全国の自治体が似た地域を参考にして、低炭素社会への取り組みを進めることができます。   つまり   ここでは、環境モデル都市と似たワードとして耳にする機会が多い、エコタウンやSDGs未来都市などとの違いについて見ていきましょう。   エコタウンとは、「ゼロ・エミッション構想」(ある産業から出るすべての廃棄物を新たに他の分野の原料として活用し、あらゆる廃棄物をゼロにすることを目指す構想)を基本構想として位置付け、まちづくりを推進する都市に対して、国が支援をする事業です。1997年(平成9年)度に創設された制度で、現在は下記の26地域が承認されています。   元々、各種リサイクル法が制定された時期に承認されたものです。2000年代から世界各国でもエコタウンの取り組みが盛んになり、国際的にも注目が高まっていました。   具体的に1999年(平成11年)に承認された秋田県の取り組みを紹介します。   1990年代半ば、秋田県では県内の非鉄金属鉱山3山の閉山を受け、新たな産業を育成する必要がありました。そこで、   2006年に使用済み小型家電の試験収集を開始し、2011年にはモデル事例として家電リサイクル法制定の参考となりました。それだけでなく、秋田県がエコタウンプランに基づいて支援した企業の製造品出荷額等は2016年度に約200億円までのぼります。   このようなエコタウンの取り組みをもとに、2008年から環境モデル都市の取り組みがなされるようになりました。つまり、   他にも、環境モデル都市は環境未来都市と並べて語られることがあります。具体的な違いを見ていきましょう。   環境モデル都市の中から、さらに厳選された地域が環境未来都市となるため、選定基準が厳しく、その分国による支援も手厚いものとなっています。   2011年には環境未来都市として11地域が選定されました。   これらの流れを受けて、2018年にはSDGs未来都市の選定が始まりました。   そもそもSDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略で、「持続可能な開発目標」を意味します。されます。   SDGs未来都市とは、地方創生の達成に向けて優れたSDGsの取り組みを提案する地方自治体を国が選定するものです。その中でも、特に優れている取り組みを「自治体SDGsモデル事業」として支援しています。   現在、   環境モデル都市との違いとしては、脱炭素だけに限らない、さまざまな地方創生施策を含んでいることが特徴です。   ここまで環境モデル都市の概要について説明してきました。次に環境モデル都市の選定条件を見ていきます。   環境モデル都市は、総理大臣が有識者を集めて開催する「地球温暖化問題に関する懇談会」の下に設けられた「環境モデル都市・低炭素社会づくり分科会」にて、「温室効果ガスの大幅な削減」「先導性・モデル性」「地域適応」「実現可能性」「持続性」の5つの条件をもとに選定しています。   それぞれ内容を確認しましょう。   具体的な温室効果ガス排出量を算出した上で、以下の考え方に沿った取り組みであることが推奨されています。   このような温室効果ガスの大幅な削減目標を達成するためには、地域全体で新しい取り組みをするシステムを作り、暮らしのあり方そのものを改善する統合アプローチが大事です。そのアプローチに新規性があるか、他の地域にも応用できるモデル性があるかが選定条件となります。   都市や地域固有の条件、特色を把握した上で、強みを活かした独自のアイディアがあるかもモデル都市の選定には欠かせません。   これらを踏まえた上で、を見られます。他にも、地域住民、地元企業、大学、NPO等、地域の幅広いセクターを巻き込んだ上で、スムーズに連携が取れるかどうかも検討されます。   最後に、ここまでの4項目すべてを踏まえて、将来を見据えた持続性のある展開が期待できるかを判断します。具体的には、旧来のまちづくりのシステムを抜本的に改革し、幅広いセクターが参加することで、普及を促すことができるかどうか。将来まちづくりを担う世代に受け継ぐために、教育を実施しているのか。これらを通して長期的な展開が見込まれるかを見られます。   環境モデル都市について分かってきたところで、具体的な取り組み事例を見ていきます。ここでは「熊本県水俣市」「福岡県北九州市」「富山県富山市」の3つの地域を取り上げます。   北九州市は、福岡県北部に位置する政令指定都市で、人口は約100万人ほどのまちです。   2008年に環境モデル都市に認定された後、2009年度に「環境モデル都市行動計画」を策定。2014年の計画改定を通して、環境モデル都市の取り組みを継続しています。国の選定以降、23都市で唯一、10年連続で最高の評価を受けているのが特徴です。   大きく分けてに取り組んでいます。   具体的な施策として、「北九州水素タウン」と「環境首都100万本植樹プロジェクト」の2つを紹介します。   まず、「北九州水素タウン」とは、東田地区を1.2km横断する大規模な水素パイプラインを通じた一般住宅への水素供給を行い、水素ビジネスに取り組む企業の新たな実証フィールドとする事業です。この規模での実証は世界初で、CO2を使わない水素社会への取り組みが期待されています。   次に、2008年にスタートした「環境首都100万本植樹プロジェクト」は、「地球温暖化を防ぐ」「うるおいのある街をつくる」「都市のなかの自然、自然のなかの都市をつくる」「市民の環境意識の高まりを育てる」ことを目的に、です。令和4年4月現在で、750,223本の植樹を達成しています。   水俣市は九州熊本県の南西部に位置する人口約3万人ほどの地域です。   1992年に日本初の「環境モデル都市づくり宣言」をした後に、2008年に環境モデル都市に選定されました。   環境政策への取り組みの4つの柱としてを中心に据えています。   その中から、「環境配慮型暮らしの実践」の具体施策である「ごみの高度分別」と「エコショップ認定制度」の2つを紹介します。   まず1つ目のごみの高度分別について、しています。市内には約300箇所のごみステーションがあり、住民が主体となって分別に取り組むことが特徴です。   2つ目のエコショップ認定制度とは、です。認定されたお店は市が情報発信をする他、年一回の審査を受けます。令和4年3月31日現在、10店舗が活動をしています。   富山市は、富山県の中央部から南東部にかけて位置する市で、人口は約42万人です。2008年に環境モデル都市に認定され、翌年に「富山市環境モデル都市行動計画」を策定。過去の計画を踏まえ、平成26年度に「第2次行動計画」、令和元年度に「第3次行動計画」とアップデートしながら今も取り組んでいます。   富山市は、「公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり」を軸にLRTネットワークの形成を進めています。   LRTとは、Light Rail Transitの略で、次世代型路面電車システムのことを指します。主に路面を走行する点は従来の路面電車と同じですが、速度が速い・車内に段差がないなど、改良された低床車両を使います。走行時の騒音や振動が低く快適性があるのが特徴です。   富山市では、LRTを中心とした公共交通の連携をスムーズにするLRTネットワークの充実を目標としています。   具体的には、富山地方鉄道が運営する富山港線のLRT化を実施。運行サービスの向上のために運行間隔を短くする、車両や電停のバリアフリー化を進めるなどを行いました。結果として、開業後には利用者が大幅に増加、平日で約2.1倍、休日で約3.3倍にのぼります。   このように、LRTネットワークの形成によって移動のしやすさが向上し、まちの賑わい創出に繋がりました。   環境モデル都市は、平成20年に13都市、平成24年に7都市、平成25年に3都市、合計23都市が選定されています。   ▼2008年7月22日   ▼2009年1月22日   ▼2013年3月15日   ▼2014年3月7日   2008年からはじまった「環境モデル都市」は、低炭素社会の実現に向けて高い目標を掲げ、先駆的な取り組みにチャレンジしている都市として、政府が選定しているものです。が選定されています。   1997年に作られたエコタウンを前身として、日本の環境問題に対するまちづくりは発展してきました。そして、2008年に環境モデル都市がはじまり、2011年には高齢化社会への対応を含めた環境未来都市も選定されるようになります。   現在では、環境モデル都市にSDGsを絡めて発展させたSDGs未来都市が主流となりましたが、これは「環境モデル都市」の取り組みがベースとなっていることがわかります。   今回は熊本県水俣市、福岡県北九州市を取り上げ、具体的な環境モデル都市の取り組みを見ていきましたが、他にもさまざまな自治体の取り組みがされています。   この機会に是非、他の自治体の環境モデル都市の取り組みも調べてみてはいかがでしょうか?
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